発達障害との向き合い方ガイドブック周囲の方へ
ADHD特性理解・
伝え方ガイド
               
              一口にADHDと言っても、さまざまな特徴があり、その程度には個人差があります。
ここでは、周囲の方がADHDについて理解を深めるための情報を紹介します。身近な人にADHDの特性があるかどうか、どうコミュニケーションを取るか考えるとき、まずは「知る・理解する」ことから始めてみませんか。

ADHDには「不注意」 「多動性・衝動性」の多様な特性がある
ADHDについてよく知らない状態で「あの人は絶対ADHDに違いない」と思い込んだり、多様な特徴・性格をADHDであると誤解してしまったりすると、相手の心を傷つけ、双方の関係性を悪化させてしまう可能性があります。一方で、特性に対する理解がある環境では、当事者も周囲の方もより良い関係性を築くことができるのではないでしょうか。
身近な人にADHDの特性があるかもしれないと感じるとき、まずはどのような場面でどのような特性が表れるのか詳しく思い出してみましょう。そしてそれがADHDの主な特性に当てはまるかどうか考えてみましょう。
- ADHDの主な特性
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ADHDの特性理解・伝え方
ADHDの特性を7つに分け、よくあるエピソードや伝え方・接し方を紹介します。
- 不注意
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                      - 活動に集中できない
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                              よくあるエピソード - 単調な作業や仕事をするとき、ケアレスミスが続いたり、作業に集中できていなかったりするように見える
  
 接し方 - 集中できる環境を整える
- 休憩時間を取って気分転換を促し、ミスの連鎖を切る
- 興味を感じ、集中して作業できるような業務を担当してもらう
- できたときはしっかり褒める
 伝え方 集中できなかったり、ミスが続いたりするときは、ちょっと休憩してみない? 作業がはかどっていないみたいだけど、一緒にできることはあるかな? 
 - 気が散りやすい
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                              よくあるエピソード - 直接話しかけているのに、違うことを考えているのかこちらの話を聞いていなかったり、返事がなかったりする
- 気になるものが視界に入ったり聞こえたりすると、すぐそちらに気が向いてしまい、作業や会話を中断されてしまう
  
 接し方 - 聞いているかどうか、都度確認する
- メモや付箋を視覚に入る場所に貼ってもらう
- 気が散る原因に触れないように、パーテーションを設置するなど集中して作業できる環境を整える
 伝え方 ●●さん(関心を惹くため直接名前で声がけする)、どう思う? 今は〇〇に集中しよう 
 - 物をなくしやすい・忘れやすい
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                              よくあるエピソード - 家を出るとき、必ずと言っていいほど忘れ物を取りに帰ってくる
- 所持品をどこに置いたか忘れてしまうようで、いつも探し物をしている
- 約束や用事を忘れることが多く、待ち合わせをすっぽかされた
  
 接し方 - なくし物・忘れ物があっても対応できるように、複数の対策を一緒に考える
- 保管場所を決める、他の人が預かる・管理するような体制にする
- メールやメモ、ホワイトボード、リマインド機能などを活用する
 伝え方 物をなくしやすい・忘れ物をしやすい特性だから仕方ないよね。だから、忘れ物をしたときのために対策を考えてみない? 今日の予定を一緒に確認しよう 明日は■■で待ち合わせね。念のため、朝に確認メールを送るね 
 - 順序だてて活動に取り組むことができない
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                              よくあるエピソード - 本人の努力の甲斐あって企画が採用されたが、その後の詰めが甘くフォローを要した
- 作業開始から完了までの見通しを立てることが困難なようで、同僚よりも時間がかかってしまう
- 簡単で刺激を感じられない作業(ルーティンワークなど)は後回しにしてしまう
  
 接し方 - 何かを依頼するときには、手順を細かく区切るなど丁寧に説明する
- 一緒に作業内容を確認したり優先順位を付けたり、スケジュールやタスクを見える化して共有する
- こまめな報告・連絡・相談を依頼する
 伝え方 順序だてて考えるのは苦手だよね、でも確認しながら進めるとうまくいくかもしれないよ 今日お願いしたい作業について、完了までの手順を一緒に確認しよう こまめに報告・連絡・相談をしてね 
 
- 多動性・衝動性
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                      - じっとしていられない
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                              よくあるエピソード - 電車や飛行機での長時間移動において、手足をそわそわ・もぞもぞさせて隣の人から不審な目で見られていた
- 会議や研修中に落ち着いてじっと座っていることができなかったり居眠りをしたりしてしまって注意を受けていた
  
 接し方 - 会議や研修など、じっとしていた方がよい状況はあらかじめ伝えておく
- 会議で役割を与えるなど、刺激が途切れないようにする
- 外回りの営業など、活動量の多い職種を担当してもらう
 伝え方 この会議の間だけ、気をつけよう 
 - 待つことが苦手
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                              よくあるエピソード - 顧客との商談開始を待っているときなどに、ゆっくりできず落ち着かない
- 行列のできる人気の飲食店に行こうと誘っても、並ぶのが苦痛で嫌がられる
  
 接し方 - 待つことが必要である場合、その場で時間をつぶす方法を考えてもらう
- 目的地を一緒に決めるとき、待ち時間が発生しそうな場所は可能であれば避けておく
 伝え方 待つのは苦手だよね、でももう少しだけ(あと●分だけ)待ってみない? 〇〇のためには、待つことが必要だよ 
 - 衝動的な感情・行動を抑えられない
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                              よくあるエピソード - 活動的でエネルギッシュだが、まるで何かに駆り立てられるかのように動いているときがある
- 会話の途中で、まだ話し終わっていないのに自分の話を被せたり遮ってきたりする
- 職場で忙しそうな人にも気にせず話しかけたりして、作業を中断させてしまう様子を何度も目にする
- 気になることや目についたことをやってしまう
  
 接し方 - 次々とアイデアを思い浮かぶという人には、その能力が活かせる仕事や環境を調整する
- 重要なことはまめに確認したり、目立つところにメモを貼ってもらう
 伝え方 一呼吸おいて行動したり話してみたりするのはどう? 相手の状況も見ながら行動してみよう 
 
相手の言動が気になるのは、相手といい関係性を築きたいからこそ、ですよね。お互いがいい関係性を保ちながらADHDの特性に対処していくために、まずはADHDについて理解を深め、伝え方・接し方を工夫していきましょう。
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監修:昭和大学 発達障害医療研究所 
所長(准教授) 太田晴久先生
本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。