大人の発達障害を知る注意欠如・多動症​
(ADHD)とは​

注意力が散漫、うっかりミスが多い、じっとしていられない、順番を待ったり時間を守るのが苦手――
そうした悩みや困りごとは、ADHDの特性が原因で生じて
いるのかもしれません。

「わかっているのにできない」ことで、歯がゆい思いを
繰り返してはいませんか?

不注意や多動性・衝動性の
特性を持つADHD

注意欠如・多動症(ADHD:Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)は、注意し続けることができず作業にミスを生じやすい(不注意)、落ち着きがない・待つことができない(多動性・衝動性)などの特性があります。不注意と多動性・衝動性の両方がある場合と、どちらか一方が顕著に現れる場合があります。

「不注意」の特徴例

  • 活動に集中できない
  • 気が散りやすい
  • 物をなくしやすい
  • 順序だてて活動に取り組むことができない

「多動性・衝動性」の特徴例

  • じっとしていられない
  • 静かにすることができない
  • 待つことが苦手
  • 衝動的な感情・行動を抑えられない

ADHDの不注意の特性があると、遅刻したり、大事な予定を忘れてしまったり、重要な書類をどこかに置き忘れたりすることなどがあります。また、計画を立てることが苦手で、見立てが甘いという傾向があります。
その一方で、アイデアを豊富に出すことができたり、人とのコミュニケーションが得意な人も多くいます。苦手な作業を克服することで、デザイナーや営業職などさまざまな職種で活躍できる可能性があります。

ADHDは発達障害のひとつですが、同じADHDと診断された人であっても特性の現れ方が違ったり、自閉スペクトラム症(ASD)や、限局性学習症(SLD)などの特性をあわせ持ったりする人もいます。

ADHDの特性は小児期から成人期まで続くことが多いですが、大人になるにつれて多動性・衝動性の程度は目立たなくなる傾向があります。ただし、不注意の特性は、大人になっても現れやすいといわれています。一方で、子どものころはADHDと気づかなかったけれど、職場でミスを繰り返すなど、日常生活や社会生活でさまざまな支障が出てくることによって、大人になってADHDに気づくこともあります。

このようなことで怒られたり嫌な思いをしたりしたことはありませんか?

ADHDは問診などから診断され、
心理検査も併用することがある

ADHDの診断は、DSM-5というアメリカ精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル」に記載
されている基準や、ASRS、CAARS™、CAADID™といった心理検査を併用した問診などによって
行われます。

DSM-5での診断基準

  • 不注意と多動および衝動性の特性が、同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められる
  • 症状のいくつかが12歳以前より認められる
  • 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっている
  • 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されている
  • その症状が統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない

これらの条件が全て満たされたとき、ADHDと診断されます。

ただし、DSM-5の解釈の幅は広く、他の病態と見分けることが難しいといった課題もあります。

このサイトでは、ADHDの特性があるかどうか確認するセルフチェックを掲載しています。
気になる人は、まずセルフチェックでADHDの可能性について確認してみては?

セルフチェック(ADHDのチェックリスト)

ADHDの特性による困りごとは、
環境調整やソーシャルスキルトレーニング、薬物療法などで対処できる

ADHDの特性による困りごとや生きづらさを軽減する方法として、以下のような対処法があります。

環境調整、ソーシャルスキルトレーニングなどによる対処

ADHDと診断された場合、まず医師や臨床心理士などからのアドバイスをもとに集中しやすい環境をつくる「環境調整」や、日常生活で実際に遭遇するトラブルを回避するため、あいさつの仕方やメモの取り方などを具体的なロールプレイを通して学ぶ認知行動療法のひとつである「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」などが行われます。

薬による対処

環境調整などの対処を行ってもADHDの症状の改善が十分ではない場合は、ADHDの症状を改善するための薬を使用することもあります。その際には、「通院日や通院時間を忘れがち」といった特性も考慮し、スマートフォンのスケジュール管理アプリの利用や、家族に通院情報を共有してリマインドしてもらうなどの工夫をするとよいでしょう。

薬は有効性と安全性のバランスに注意しながら選択されます。なお、薬を使う場合でも環境調整やSSTなども続けて取り組んでいくようにします。また、うつや不安などの精神的な不調を伴う場合には、その治療もあわせて行います。

そのほかにも、ADHDの症状によって日常生活に支障が出る場合は、ライフステージに応じてさまざまなサポートを受けることができます。
ひとりで悩まず、相談窓口や医療機関に相談することで、生きづらさを和らげることができるかもしれません。

監修:昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授) 太田晴久先生

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。