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大人の発達障害を知る学習障害/
限局性学習症
(LD/SLD)とは​

文字を声に出してうまく読めない、文字を書くのが苦手で時間がかかる、計算がうまくできない――
「読む」「書く」「計算する」が極端に苦手、といった
困りごとは、LD/SLDの特性が原因で生じているのかも
しれません。

読み・書き・計算について、周囲と同等に求められている
レベルについていけない場面などはありませんか?

読み・書き・計算などが
著しく苦手なLD/SLD

学習障害/限局性学習症(LD/SLD:Learning Disorder/Specific Learning Disorder)は、知的障害とは異なり全般的な知能の遅れはなく、読む・書く・計算するといった特定の学習行為において支障が
認められるという特性があります。

LD/SLDの特徴

  • 読めない:文章を正確に読んで理解するのが難しい
  • 書けない:文字を正確に書くことや、筋道を立てて文章を作成するのが難しい
  • 計算できない:暗算や筆算など、数の概念を理解することが難しい
  • 推論できない:結果を予測したり、結果から原因を推しはかったりするのが難しい

LD/SLDは、上記のうちひとつ、または複数の特徴があり、学習行為において支障がある状態です。
読むことが苦手な読字障害は
「ディスレクシア」、書くことが苦手な書字表出障害は
「ディスグラフィア」、数字や計算が難しい算数障害は
「ディスカリキュリア」と、タイプによって大きく3つに分類されます。
自閉スペクトラム症(ASD)や、注意欠如・多動症(ADHD)の特性をあわせ持つ場合もあります。

LD/SLDは知的障害とは異なる(知的障害は併存しない)ため、子どものころは単に「勉強不足」や「努力が足りない」などといわれ見過ごされてしまうこともあります。また、大人になってからLD/SLDの特性があることがわかる人もいます。

LD/SLDは問診やスクリーニング
などから診断される

LD/SLDの診断は、DSM-5というアメリカ精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル」の
診断基準や認知能力検査などを問診と併用して行われます。

DSM-5での診断基準

  • 次の症状のうち少なくともひとつが存在し、6カ月以上継続している
    (ア) 読むことが不的確または遅い
    (イ) 文章を読めても意味を理解するのが難しい
    (ウ) 字の綴りを間違える
    (エ) 文法や句読点の間違い、段落をうまくまとめられない
    (オ) 数値や計算を習得するのが難しい
    (カ) 数学的な推論ができない
  • 学業的な技能が年齢相応ではなく、学業や職遂行に差しさわりがある
  • 学習困難が、知的能力障害や視力・聴力、他の精神疾患などでは説明できない

また、心理検査や書字・読字・計算などの能力を調べる認知能力検査、CTやMRIによる画像検査、身体機能検査などを行うこともあります。

LD/SLDには特性に応じた周囲の
サポートが大切

LD/SLDの特性による困りごとや生きづらさを軽減する方法として、以下のような対処法があります。

ICT技術の活用

学童期のディスクレシアにおいては、解読指導アプリなどを用いて音読のつらさを軽減する方法を行うことがあります。
また、スマートフォンやタブレットで文字を拡大・音読するといった、ICT(Information and Communication Technology)技術の活用によるサポートも登場しています。

カウンセリングや環境調整

LD/SLDの特性を持つ人には、周囲のサポートが重要です。基本的には家庭や職場の環境を整え、適切なカウンセリングを行うことなどによって、読み書きや計算などで生じる困りごとを軽減する方法がとられます。

たとえば職場では、読みにくさを軽減するためにマーカーなどを使って大事なポイントを強調したり、指示をメモしたりメールで送ったりするなどの方法が考えられます。

たとえば職場では、読みにくさを軽減するためにマーカーなどを使って大事なポイントを強調したり、指示をメモしたりメールで送ったりするなどの方法が考えられます。

また、うつ病や不安障害、睡眠障害などの精神的な疾患を合併する場合(二次障害)は、それぞれ抗うつ剤や抗不安剤、睡眠導入剤などの薬を用いた治療も行います。

監修:昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授) 太田晴久先生

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。