大人の発達障害を知る発達障害に併存
しやすい
病気・症状

発達障害と付き合ううえで
知っておきたい病気や症状

発達障害には、併存しやすい病気や症状がいくつかあります。
ここでは、そういった病気や症状が併存する理由、割合、対処法などについてご紹介します。

発達障害の特性とうまく付き合うためには、併存する病気・症状をケアすることも大切なポイントです。もし、ここで紹介した病気・症状について心当たりや気になること、困っていることがあれば、医療機関や各種支援機関に相談することもできます。
ひとりで抱え込まず、医療やサービスをうまく活用しましょう。

  • ここで紹介している病気や症状、または発達障害の二次障害は、発達障害がある方に必ず起こるという訳ではありません。
  • 発達障害の二次障害とは、発達障害の特性による生きづらさや困りごとなどを原因として、後発的に発症する可能性がある疾患を指します。発達障害の併存症の全てが二次障害というわけではありませんが、早めに対処することで、発症や悪化を防ぐことができます。

うつ病

うつ病とは、精神疾患である気分障害のひとつです。
一日中気分が落ち込む、何をしても楽しめないといった精神的症状や、不眠や食欲がない、体重の増減、気力の減退などの身体的症状が継続して認められると、うつ病と診断されます。

日本では、ADHDと診断された成人202名のうち49%が、またASDと診断された成人339名のうち41.0%が「うつ病の診断を受けたことがある」と回答したという研究報告1)があります。また、ADHDと診断された成人において、米国では約19%にうつ病の併存が認められたという調査報告2)があり、欧州でも30~50%にうつ病の症状が1回以上認められたと報告3, 4)されています。

うつ病を発症する原因のひとつには、心理的なストレスがあげられます。発達障害のある方は、自身の特性とうまく付き合う方法が見つかってない場合、「仕事上のミスを生じやすい」、「人間関係でつまずくことが多い」といった声が多く、自己肯定感や自尊心が低下することでストレスを強く感じやすい傾向にあります。

双極性障害

双極性障害とは気分障害のひとつで、落ち込んだ抑うつ状態と活発なそう状態という、両極端な状態が繰り返される疾患です。20歳前後に発症することが多く、症状や服薬状況などを総合的にみて診断されます。

日本人全体での双極性障害の患者数は、重度・軽度をあわせても0.4~0.7%、1,000人に4~7人弱5)と、決して多くはありません。しかし、発達障害があると双極性障害の発症率が高まり、ADHDとASDの両方の診断を受けている成人の19.1%が双極性障害の診断を受けたことがあると回答したという研究報告があります1)。また、海外においては、発達障害のある成人で、およそ19%に併存しているという報告2)から、なかには半数近い47%に併存しているという報告6)もあります。

双極性障害の治療は、躁状態、抑うつ状態、症状が安定している状態と、そのときの状態に応じて治療法が異なります。基本的には薬物治療が治療の中心になりますが、それに加えて自身の状態を理解し、しっかり向き合うことで症状のコントロールを目指す、心理社会的治療も行われます。

不安障害

不安障害とは、パニック障害や社会不安障害など、不安を主症状とする精神の総称です。たとえば、不安発作により満員電車に乗ることができなくなったり、人前に出ることを避けるようになったりといった困りごとを生じることがあります。予期憂慮よきゆうりょといわれる、学業や仕事などに関する過剰な不安や心配が6ヵ月以上にわたって続くと、全般性不安症と診断されます。

不安障害は、ADHDと診断された成人の25~35%に併存するといわれており2)、日本でもASDと診断された成人の4.1%、ADHDと診断された成人の2.5%が全般性不安症の診断を受けたことがあると回答した研究報告もあります1)

発達障害のある方の中には、社会性の難しさなどから生じるトラブルなどがストレスとなり、二次障害として不安障害を発症する方もいます。

発達障害の二次障害として不安障害を発症した場合は、最小限の薬物療法や、認知行動療法を含む精神療法が検討されます。薬物の選択は、症状の強さ、その他に併存する病気、有効性と安全性のデータなどをもとに、慎重に検討されます。

パーソナリティ障害

パーソナリティ障害とは精神疾患のひとつで、ものごとの考え方や、感情のコントロール、コミュニケーションなどにおいて、大多数と異なる特徴を持つことが原因で苦しんだり、社会生活に支障が出たりしているときに診断されます。
パーソナリティ障害にはいくつかの種類がありますが、境界性パーソナリティ障害では対人関係や感情が不安定で、ネガティブな思考から不安や恐怖を抱きやすく、衝動的に自傷行為をしてしまうといった症状が表れます。自己愛性パーソナリティ障害では、自分を過大評価し、注目や賞賛を受けたいという気持ちが強く、対人関係に困難さが生じてしまいます。

ADHDと診断された成人では、女性の14.0%(非ADHDは1.7%)、男性には8.7%(非ADHDは1.1%)にパーソナリティ障害の併存が認められたという報告7)があります。しかし、発達障害の特性がパーソナリティー障害の特徴と誤認されやすいことに留意する必要があります。

パーソナリティ障害を発症する原因は明らかにはなっていませんが、うつ病や不安障害など他の精神疾患と合併することが多く、受診により実はパーソナリティ障害も潜んでいたということが明らかになることがあります。

治療においては、一般的に支持的精神療法、認知行動療法、精神分析的精神療法などの精神療法が長期間行われます。また薬物療法や、併存する他の精神疾患の治療もあわせて行うことが重要であるとされています。

物質関連障害
(アルコールや薬物への依存)

物質関連障害とは、アルコールや薬物、ギャンブルなど、特定の物質や行動にのめり込み、「やめたくても、やめられない」状態になる精神疾患で、いわゆる依存症です。

特定の物質や行動を「やめたくても、やめられない」という状態は、単に心の弱さのみに起因するものではなく、そうした行動を続けることにより脳に変化が起きることで症状が引き起こされる病気です。特にADHDのある方は、脳内報酬系に特徴があり、依存状態に結びつきやすいと考えられています。また、発達特性による生活上でのつまずきが自己肯定感や自尊心の低下を招きやすいことも発症に影響すると考えられています。

国内における研究報告では、ASDと診断された成人の3.2%、ADHDと診断された成人の5.0%、ASDとADHD両方の診断を受けた成人の7.6%が、アルコール、ギャンブル、薬物等の依存症の診断を受けたことがあると回答しています1)。2017年の「ギャンブル等依存に関する疫学調査(全国調査結果中間とりまとめ)」では、成人でギャンブル依存が疑われるのは0.8%という結果が出ていますので8)、発達障害のある人での依存症の割合は高いと考えられます。

物質関連障害、依存症が疑われる場合には、それを“病気”ととらえ、適切な支援や治療を受けることが重要です。また依存症は、一時的にやめることができても、些細なきっかけで再び誘惑にかられることがあります。これは依存症の特徴と考え、根気よく再度治療に取り組むことも重要です。

睡眠障害

睡眠障害には、不眠症や過眠症、睡眠リズム障害などいくつかの種類があります。
不眠症は、寝つきが悪い、眠りが浅い、睡眠を保てない(睡眠中に目が覚める)、朝早く目が覚める、などといった不眠の状態が続き、日中に眠気や疲れといった不調が表れる病気です。一方で、過眠症は夜間に眠っているにもかかわらず、日中に眠気を感じます。

発達障害と睡眠障害の関係としては、日本ではASDと診断された成人の34.8%、ADHDと診断された成人の36.1%、ASDとADHD両方の診断を受けた成人の40.4%が、「不眠で病院を受診した」と回答したという研究報告があります1)。また、海外ではADHDと診断された成人のうち47%が日中の眠気を感じ、そのうち22%は中枢性過眠症と診断されたという報告もあります9)

発達障害と睡眠障害の併存率が高い原因については、明らかにはなっていません。しかし、発達障害に伴う生活リズムの乱れと、睡眠と覚醒を調整する脳の中枢神経に、何らかの機能不全が生じている可能性があるのではと考えられています。

睡眠障害の治療では、規則正しい食事や、朝にしっかりと日の光を浴びるなどして生活のリズムを整えるとともに、睡眠を誘導する薬物療法を行うこともあります。

<コラム>発達障害の二次障害とは?

発達障害の特性による生きづらさや困りごとといった心理的なストレスが元となり、うつ病や不安障害、依存症などの精神疾患や睡眠障害を引き起こしてしまうことがあります。これを二次障害といいます。

専門医からの
ワンポイントメッセージ

二次障害は、発達障害がある方に必ず起こるという訳ではありませんが、生きづらさや困りごとを放置したり適切な対処法を取らなかったりした場合に発症しやすい傾向があります。
困っていることや悩んでいることについて、周囲の人や支援機関などに相談したり対処法を取り入れたりすることで、二次障害の発症を防ぐことができる可能性があります。

もし二次障害を発症した場合は、一般的にそれぞれの二次障害の治療が優先的に行われます。二次障害の症状が安定していないと、発達障害への対処もうまく行えなくなる場合があるためです。たとえば、うつ病の治療では、まずしっかりと休養をとり、症状に応じて薬物療法や、認知行動療法などが行われます。ただし、二次障害の治療を優先するとしても、原因となっている発達障害の特性への理解や配慮は不可欠です。

また、二次障害の発症や悪化を防ぐには、ストレスが発生しやすい環境をできるかぎり調整することも大切です。環境調整のためには各種支援機関を活用することもできます。

ここで紹介した病気・症状や二次障害について心当たりや気になること、困っていることがあれば、ひとりで抱え込まず、周囲の人や支援機関、医療機関などを頼ることも検討してみてはいかがでしょうか。

生活習慣病

生活習慣病とは、食生活や運動習慣、あるいは飲酒や喫煙などの嗜好品しこうひんの摂取といった生活習慣が大きく関与する病気の総称です。具体的には、高血圧や脂質異常症、糖尿病などがあり、それらが脳や心臓の病気、がんなどの発症に至る場合があります。

発達障害と生活習慣病に関しては、ADHDと肥満との関係を推論した研究報告があります。肥満は、糖尿病や脂質異常症、高血圧など、多くの生活習慣病の原因になります。その研究では、ADHDではない人に比べてADHDのある成人では約70%、小児では約40%において、肥満の割合が高いと報告されています10)。理由としては、ADHDの特性である衝動性や不注意が、食事摂取量の増加につながる可能性があるため、と考えられています。

発達障害と付き合いながら規則正しい生活のリズムを保ち、食生活に気を配りながら、血圧や血糖値の管理をすることで、肥満や生活習慣病を予防する方法もあります。可能な範囲で、ご自身の生活リズムや食事について考えてみる機会をつくってみましょう。

発達障害同士の併存

発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)/限局性学習障害(SLD)がありますが、発達障害の種類や特性の表れ方・程度には、個人差があるのが特徴です。ひとつの種類・特性だけが表れる人もいれば、いくつかの種類・特性が重なって表れる人もいます。いくつかの特性が重なっている場合、そうでない場合よりも生活の困難度が高い傾向にあります。

児童におけるLDは、ASDの約26%、ADHDの約30~40%に併存するという報告があります11)。また別の報告では、発達障害のある成人(20~70歳)838名のうち、ASDとADHDの併存は26.8%(225例)に認められています1)

ADHDとASDは特性に共通する部分もあり、判別や併存がわかりづらい場合があります。しかし、単に“発達障害”としてひとくくりにしてしまうと、対処法が明確にならない可能性もあるため、慎重に診断されます。複数の特性が重なっている場合、それぞれの困りごとや状況に応じて、特定の特性に偏らない対処法を考える必要があります。

発達障害の特性とうまく付き合うためには、併存する病気・症状をケアすることも大切なポイントです。もし、ここで紹介した病気・症状について心当たりや気になること、困っていることがあれば、医療機関や各種支援機関に相談することもできます。ひとりで抱え込まず、医療やサービスをうまく活用しましょう。

【引用文献】

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。

監修太田 晴久先生
昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授)

監修 太田 晴久先生 昭和大学  発達障害医療研究所  所長(准教授)

2002年 昭和大学医学部卒業後、昭和大学附属病院、昭和大学附属烏山病院 成人発達障害専門外来などで勤務。2012年 自閉症専門施設のUC Davis MIND Instituteに留学し、脳画像研究に従事。2014年から昭和大学附属烏山病院、発達障害医療研究所にて勤務し、現在は昭和大学発達障害医療研究所 所長(准教授)。

【専門医・認定医】
精神保健指定医、日本精神神経学会 指導医・専門医、成人発達障害支援学会 評議員、日本成人期発達障害臨床医学会 評議員