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付き合い方・向き合い方ガイドブック周囲の方へ
発達障害について
打ち明けられたら

どう受け止め、どう対応すればいい?

発達障害のある人が周囲に診断の有無や特性について打ち明けるというのは、ときには勇気が必要なことかもしれません。その勇気に応えるためにも、周囲はどのように受け止め、対応したらよいのか、いくつかヒントを紹介します。

発達特性について打ち明けるということ

身近な人から「発達障害がある」 「グレーゾーンである」などと打ち明けられたとき、どのように受け止め、対応すればよいかを考えるにあたり、まずは「なぜ打ち明けてくれたのか?」ということを考えてみましょう。きっとそこには人の数だけさまざまな状況があります。

たとえば・・・

  • 発達障害や自身の特性について理解してほしいという気持ちから打ち明けた
  • 最近、医療機関で発達障害があると診断されたので、仲のよい友人や職場の同僚に話した
  • 以前から発達障害の診断を受けていたが、環境調整や合理的配慮、障害者雇用について相談するために相談した
  • 自身に発達障害の疑いを感じ、医療機関を受診したが診断には至らなかった(グレーゾーンだった)が、日常生活や仕事には特性による困りごとがあるため、周囲の人に打ち明けた

発達障害やグレーゾーンという言葉や理解は、徐々にではあるものの確実に社会に浸透しつつあります。しかし、まだ誤解や偏見が残っているのも事実です。医療機関や専門機関で発達障害について相談することは、なんらかの解決・サポートを得ることが目的ですから、当事者にとってさほど抵抗があることではないでしょう。しかし、周囲の人に対しては「誤解されたらどうしよう」「築いてきた関係性が崩れてしまったらどうしよう」 「自分になんらかの不利益が生じたらどうしよう」といった不安があり打ち明けることを躊躇する場合が多いかもしれません。そのため、発達障害について周囲の人に打ち明けるということは、さまざまな困りごとや苦悩・葛藤がある中で「勇気を出して打ち明けてくれたんだ」と考えてみるのがよいのではないでしょうか。

どのように受け止めたらよいか
——打ち明けてくれた当事者が望んでいること

このように、当事者が周囲の人に発達障害について打ち明けるのには、さまざまな状況・理由があります。しかし、話を聞いている途中や話し終わった後のリアクションによっては当事者を傷つけてしまったり、打ち明けたことを後悔させてしまったりするかもしれません。ですからまずは、勇気を出して打ち明けてくれたことに感謝し、その内容をしっかり受け止めましょう。

では、当事者はどのように受け止めてほしいと考えているのか、いくつか例を紹介します。

<こんな風に受け止めてほしい(一例)>

  • 話したことを先入観なくそのまま受け入れてほしい。
    「障害がある人」 「みんなと違う」などのレッテルを貼るのではなく、ひとりの価値ある人間として受け入れてほしい。
  • 「打ち明けた・相談したから今すぐなにかをしてほしい」というわけではないこともある。まずはただ気持ちを分かってほしい。
  • 気休めやその場しのぎの言葉、否定的な言葉で濁さないでほしい。
    たとえば、「普通に見えるよ」「そんなの誰もが持っている悩みのひとつじゃないの」 「みんな頑張っているんだから」などと言われたら傷ついてしまう。

ただ、こういった心の中の本音を伝えることは、人によっては発達障害の診断の有無や特性などといった事実について打ち明けること以上に難しい場合もあります。当事者から特に申し出がなくても、自身の価値観を押し付けたり、適当に受け流したりせず真摯に受け止めることで、当事者は「打ち明けてよかった」と感じられるのではないでしょうか。

どのように対応すればよいか

発達障害の診断の有無や特性の程度、周囲へ打ち明けているかどうかにかかわらず、コミュニケーションの基本は同じです。しかし、当事者からの打ち明けられた後、どのように対応すればよいか、日常生活や職場での接し方を変えるべきかどうかなど、すぐには判断できないこともあるかもしれません。
では、当事者が打ち明けた状況・理由にどのように対応すればよいのか、紹介していきます。

まずは発達障害とはなにか知ろう

発達障害とは、生まれつき持っている脳の性質や働き方、その後の発達の仕方に偏りがあることで起こる言語や行動、情緒などの特性のことです。自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害/限局性学習症(LD/SLD)の大きく3つのタイプがあります。また、グレーゾーンとは、発達障害の特性があるが、医療機関での確定診断には満たない状態をあらわす言葉です。
発達障害の種類や特性のあらわれ方・程度には個人差があるのが特徴で、さまざまな困難を抱えて生きづらさを感じている人も多くいます。また、診断されていないからといって困りごとや生きづらさが“軽い”とは限りません。

本サイトでは、発達障害とその特性について詳しく紹介しています。以下のページもぜひご覧いただき、発達障害への理解を深めてみませんか。

打ち明けてくれた当事者の特性と困りごとを理解しよう

前述のとおり、特性のあらわれ方や程度には個人差があります。それぞれに合った対応をするために、打ち明けてくれた人の特性や困りごとについて理解することも大切です。
ただし、特性や困りごとを他者に話すことに抵抗がある人もいますので、お互いの関係性を崩さないよう様子をみながら聞いてみましょう。

ここでは、特性の多様さと、対応方法についていくつか例を紹介します。

<特性の多様さ>

  • 見え方、聞こえ方などの感じ方がそれぞれ違う
    発達障害の特性により、“一般的な感覚”とは異なる感じ方をする人も多い。たとえば、視覚過敏や聴覚過敏などといった感覚過敏とよばれる感覚が過剰に反応する症状や、雑音の中から必要な音を拾って認識することが苦手な聴覚情報処理障害など、さまざまな感じ方がある。そのため、普通に話しているつもりでも相手が期待通りに受け取れていない可能性がある。

感覚過敏・感覚鈍麻

  • 相手に物事をうまく伝えることが難しい場合もある
    自分の考えや気持ちを適切な言葉に置き換えることができず、相手に誤解されるような言い方をしてしまうなど、うまく伝えられない場合もある。そのため、話した内容を言葉通りに受け取らない方がよいこともある。

<対応方法の一例>

  • 何気ない言葉でも、当事者にショックを与えてしまう可能性がある。

    避けた方がよい言葉

    「頑張れば克服できる」
    発達障害が“脳の特性”であることを理解しておらず、根拠のない叱咤激励になってしまっている
    「できないんじゃなくて、やらないんでしょ」 「どうしてできないの?」
    無理解や一方的な叱責になってしまっている
  • 当事者の望みを上回る対応により、かえって当事者の不安を大きくさせてしまうこともあるため、対応方法を本人と相談しながら進めていくのがよい。
  • 家族にも発達障害のある人がいる可能性や、家庭の状況を考慮しなければならない場合もあり、本人のフォローに加えて、状況に応じて家族のフォローも可能な範囲で行う。

困ったら周囲の人も利用できる相談機関へ

対応方法などについての悩みがあれば、専門家に相談することができます。周囲の人も相談できる支援・サービスもありますので、まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

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監修:NPO法人DDAC(発達障害をもつ大人の会)

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。