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大人の発達障害を知る発達障害と混同
され
やすい言葉・病気

理解を深めてともに生きるために
知っておきたい言葉

精神障害やコミュニケーション障害など、発達障害と似た言葉はたくさんあります。また、医学的な解釈とは異なる理解をされがちな言葉もあります。
正しい理解につながるよう、それぞれの言葉の表す状態や違いを紹介します。

精神障害

精神障害とは、精神疾患があることで日常生活や社会生活に支障がおきている状態を指します。現在の診断基準においては、発達障害も大枠としては精神障害に含まれます。しかし、生まれつきの特性である発達障害に対して、他の精神障害の多くは思春期以降に発症するという根本的な違いがあります。

精神疾患には、さまざまな種類があり、主なものとして統合失調症や気分障害(うつ病や双極性障害)、不安障害、依存症、適応障害、認知症などがあります。疾患によって障害の特性や生活での制限の度合いは異なります。

主な精神疾患

統合失調症

脳の働きにより気持ちや考えをまとめることがうまくできず、幻覚(幻聴)や妄想、意欲低下などの症状があらわれる疾患です。

気分障害

気分が落ち込んだり高揚したり変動する疾患の総称です。落ち込んだ状態が続く「うつ病」や、うつ状態と高揚した躁状態の波を繰り返す「双極性障害」などがあります。

不安障害

パニック障害や社会不安障害など、不安を主とする精神疾患の総称です。不安発作により、満員電車に乗ることができなくなったり、人前での発表を避けるなどの問題が生じることがあります。

依存症

特定の物質(アルコールや薬物など)や行動(ギャンブルなど)にのめり込み、「やめたくても、やめられない」状態になることを指す言葉です。

適応障害

特定の状況や出来事などによる強いストレスが原因で、気分の落ち込みやいらだち、不眠症や頭痛、集中力の低下など、心身のさまざまな症状が現れることで、社会生活に支障をきたす状態です。

コミュニケーション障害

最近では、人とうまく話せない場合や、“空気が読めない”という意味で「コミュ障」という言葉が若者を中心によく使われています。当然ながらいわゆる「コミュ障」の多くは病気や障害ではありません。ここでいうコミュニケーション障害は「コミュ障」とは異なり、神経発達症のひとつです。

具体的には、「言語を用いる能力が低いためうまく説明ができない」、「うまく発音できない」、「相手や状況に応じたコミュニケーションが困難」などの特徴が現れます。
代表的な神経発達症である自閉スペクトラム症とは、こだわりや常同性(同じ行為や言葉などを長時間反復・持続すること)が目立たない点で違いがあります。

愛着障害

愛着障害とは、乳幼児期に長期にわたって虐待やネグレクト(放置)を受け、保護者との安定した愛着(愛着を深める行動)が絶たれた経験が原因で引き起こされる障害の総称です。アタッチメント障害とよばれることもあり、自尊心が低下したり、人とのコミュニケーションに困難が生じ、苦しんだり悩んだりします。

パーソナリティ障害

パーソナリティ障害とは、ものごとの考え方や、感情のコントロール、コミュニケーションなどにおいて、大多数と異なる特徴を持つことで苦しんだり、社会生活に支障が出たりしている状態を指します。原因には遺伝的要因と環境要因があると考えられています。より細かい分類として「境界性パーソナリティ障害」や「自己愛性パーソナリティ障害」など複数あります。
発達障害は生まれつきの特性であるのに対して、パーソナリティ障害は本人の持つ素因や環境要因との相互作用によって徐々に成長・発達に従い形成されていくものです。

HSP

HSP(Highly Sensitive Person、ハイリー・センシティブ・パーソン)とは、感受性が強く、視覚や聴覚などの感覚が敏感で、刺激を受けやすい特性を持つ人を表す言葉です。人や物、環境などから過剰な刺激を受けたり、共感力が高く周囲の人に気を配りすぎたり、また自己肯定感が低いことも多く、生きづらさを感じやすい特徴があるといわれています。

しかし、あくまで気質を示す用語で、定義も曖昧であり、医学的な診断名ではありません。そのため、医療のなかでHSPと診断することは通常はありません。マスコミやネット上で様々な説明を伴って幅広く取り上げられており、HSPであると自ら疑う方が増えていますが、そのなかに精神障害や発達障害などが含まれている可能性があります。

監修:昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授) 太田晴久先生

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。