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大人の発達障害を知る 発達障害と
睡眠障害

不眠や強い眠気などが起こる原因や
対処法を紹介

発達障害のある人で、眠気や睡眠に関する困りごとを抱えている人は多いのではないでしょうか。
ここでは、発達障害と睡眠の関係やその対処法などについて紹介します。

発達障害と睡眠障害は併存しやすい

一般的に、発達障害がある人は、睡眠障害を併存している割合が高いとされています。
日本では、ASDと診断された成人の34.8%、ADHDと診断された成人の36.1%、ASDとADHD両方の診断を受けた成人の40.4%が、「不眠で病院を受診した」と回答したという研究報告があります1)。また、海外ではADHDと診断された成人のうち47%が日中の眠気を感じ、そのうち22%は中枢性過眠症と診断されたという報告もあります2)

発達障害の特性と睡眠障害の両方があることで、生活や仕事などでの困りごとが増えたり深まったりするかもしれません。

睡眠障害の種類と、発達障害がある人での眠気の特徴

睡眠障害とは、睡眠に関連するさまざまな病気の総称で、不眠症や過眠症、睡眠リズム障害などが含まれます。

  • 不眠症:
    寝つきが悪い、眠りが浅い、睡眠を保てない(睡眠中に目が覚める)、朝早く目が覚める、などといった不眠の状態が続き、日中に眠気や疲れといった不調が表れる病気
  • 過眠症(中枢性過眠症):
    睡眠を妨げる病気がなく、夜間に眠っているにもかかわらず、日中に強い眠気を感じる病気で、ナルコレプシー、特発性過眠症などに細分される
  • 睡眠リズム障害:
    体内時計を調整できず睡眠と覚醒のリズムが乱れてしまい、寝つきが悪くなったり日中に眠気を感じたりする病気
  • その他:
    睡眠関連呼吸障害、睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害など

発達障害のある人では、幼少期から日中に強い眠気を感じる人が多いとされています。また、小児期には特に問題に至らなかったものの、思春期以降に支障が出始めたという人もいるでしょう。
発達障害と睡眠障害の両方があると、興味・関心のあることにこだわる・集中するという特性から、夜遅くまで続けてしまい寝つきがより悪くなったり、あるいは興味・関心のない授業や仕事に退屈してしまうことで、より眠気を感じやすくなったりします。

発達障害と睡眠障害を併存する原因

発達障害と睡眠障害の併存率が高い原因については、原因は明らかではありませんが、発達障害の特性には睡眠を含む生活全般のリズムが乱れやすいという側面があります。また、ADHDやASD、睡眠障害は神経伝達物質であるドパミンやノルアドレナリンという覚醒状態を維持するためにも必要な物質と関連があると考えられています。ADHDやASDではこれらの物質の分泌量が調整不十分または機能不全により低下しているとされています。
このように、発達特性に伴う生活リズムの乱れと、睡眠と覚醒を調整する脳の中枢神経における機能不全が相まって、発達障害と睡眠障害が併存しやすいのではないかとも考えられています。

睡眠障害への対処法

睡眠障害の種類や程度、困りごとは人それぞれ異なります。そのため対処法においても、普段の生活習慣を見直したり、便利なアイテムを用いたり、自分に合った対処法を探して実践することが重要です。

対処法の例と体験談をいくつか紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

自分の睡眠リズムを知り、便利アイテムも活用する

毎日何時に入眠・起床しているか、夜間に目が覚めるか、日中に眠気があるかどうかなどを把握することは、生活習慣改善・睡眠時間調整のきっかけにもなります。自身でノートなどに記録するほか、睡眠の記録を取ることができるアイテムなどを用いるのもよいでしょう。

<体験談>

  • 睡眠リズム障害と向き合うために、ウェアラブルデバイスなどを活用して睡眠時間を計測し、毎日紙に記録することで、睡眠状態を可視化・把握できるようにしています
  • 睡眠リズム障害のために睡眠時間がずれたときには早めに就寝するようにしたり、薬を飲む時間を変えたりと、試行錯誤を重ねています

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環境調整をする

生活や仕事へ影響が出てしまう場合、発達障害に理解のある職場や生活スタイルに合わせた仕事の仕方を選ぶことも一案です。

<体験談>

職場には、発達障害に対する理解があり、合理的配慮や支援を受けながら働けるところを選びたい

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睡眠障害について相談するには

睡眠障害は病気であり、すべてを自力で対処し解決することは難しいかもしれません。睡眠時間の調整や環境調整を行っても困りごとが解決せず、生活に支障が出てしまう場合は、医療機関へ相談することをおすすめします。
不眠などの睡眠障害は、主に精神科や心療内科などで診療されます。最近では睡眠を専門に扱う「睡眠外来」を標榜している医療機関もありますので、お近くの医療機関を探してみてはいかがでしょうか。また、発達障害について医療機関に通院している場合は、その主治医に相談することもできます。

※睡眠障害の中には、精神科・心療内科以外で診療されるものもあります。
例:睡眠関連呼吸障害は呼吸器内科や耳鼻咽喉科にて診療されることもある など

【引用文献】
  • 令和元年度厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業 発達障害の原因,疫学に関する情報のデータベース構築の
    ための研究-成人の発達障害に合併する精神及び身体症状・疾患に関する研究
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192131/201918004A_upload/201918004A0008.pdf
  • Lopez R et al. J Atten Disord. 2020 Feb;24(4):555-564.

監修:昭和大学 発達障害医療研究所
所長(准教授) 太田晴久先生

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。