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発達障害 みんなのストーリー

発達障害があってもなくてもお互い様。
大切なのは、二人でバランスを取りながら話し合い、未来に進んでいくこと

配偶者(家族)インタビュー
~亀山 聡さん(40代・男性)~
(ナナトエリさんの夫)

プロフィール:

  • 年齢:40代
  • 職業:漫画家
  • 発達障害との関係:妻(発達障害)
  • 妻の特性に気づいた時期:30代前半
  • 妻が病院を受診した時期:30代後半
  • 妻が診断された時期:30代後半
  • 妻の診断名:発達障害

主な特性:

  • 注意力を長く継続することが苦手
  • 人に会うと話しかけたくなる
  • 思い立ったらすぐに行動する
  • 聴覚・嗅覚が過敏、特に高音や雑踏の音が苦手
  • 自分の意思と関係なく体の部位が動いてしまう
  • 算数障害や識字障害(軽度)がある

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。

発達障害に気づく

「ものすごくしっかりしている」が第一印象

私が妻のナナトエリと初めて出会ったのは、漫画家志望の方が集うコミュニティの場。当時、私は漫画家のアシスタントをしており、彼女は漫画家を目指して上京し、アパレルで接客業に従事していました。自分の社会人としてのスキルにあまり自信がなかったせいかもしれませんが、私は彼女を見て、「社交的で、ものすごくしっかりしている」という印象を受けました。シチュエーションこそ違いますが、私たち夫婦が著者のコミック『僕の妻は発達障害』で描いているようなイメージです。

『僕の妻は発達障害』
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それから3年ぐらい友人として付き合うなかで、彼女は思い立ったらすぐに行動し、あっという間に漫画の仕事を獲得していきました。消極的な私とは異なり、行動力がある彼女を見て、「こういう人が漫画家になっていくのか。結果を出してすごい」と、衝撃を受けていました。また、他の人にはない発想も魅力的でした。今となって思えば、衝動性といった発達障害の特性が、プラスに働いていたのだと思います。

結婚してからも違和感はなかった

その後1年ほど交際して結婚したのですが、彼女には裏表がなく、結婚生活においても付き合っていた時と変わらず、私自身は何の違和感もありませんでした。

ただ彼女自身は、小さいころから生きづらさを抱えており、実際に「軽症のうつ病」と診断され通院していました。本人はパーソナリティ障害といった、他の精神疾患もわずらっているかもしれないと思っていたようで、私も色々と精神疾患に関して調べたりしていたのですが、ネガティブなイメージは全くなく、彼女に対しても同じでした。

私も彼女もお互いに理屈っぽいところがあるせいか、結婚当初から夫婦喧嘩はよくしていました。そのたびに、私の考えや思いを何回も伝えるのですが、彼女はそれをすっかり忘れてしまっているようでした。あまりにもそのような状態が続いたので、「話に耳を傾ける気がなく、私の考えなどはどうでもいいと思っているのか」と私が思うようになり、そのことを思い切って伝えました。その時ふと、自分の行動が何かの精神疾患に当てはまるのではないかと彼女が考え、インターネットで調べたら、発達障害というキーワードが出てきたのです。そこで、彼女が通院していた病院で様々な検査をしてもらったところ、発達障害と診断されました。結婚してから、1年ほど経った時のことです。

発達障害を受け入れる

原因が分かれば対処法を考えられる

彼女が発達障害であることを知った時は、名前を聞いたことがあるといった程度で、具体的な内容まではよく分かりませんでしたが、本人は、小さい時から今まで、ずっと苦しんできたのだろうと思いながらも、私自身は、あまり戸惑うことなく受け入れることができました。

診断されてからは、彼女と一緒に病院に行き、発達障害の特性やどのように向き合っていけばいいのかなど、主治医から話を聞いたり、自分なりに本や専門のWebサイトなどで勉強したりしました。そうするうちに、例えば、相手の状況を考えずに話しかけてしまうといったことは、彼女の性格や意思の問題ではなく、ただ単に特性の問題だということが分かってきました。

特に、夫婦喧嘩した時に、話を聞かず、私の考えを受け入れてくれないと思っていたことに対し、彼女の悪意ではなく、発達障害の特性が出ていたにすぎないと受け入れることができたので、腑に落ち、胸のつかえがとれスッキリしました。

原因が分かれば対処法を考えることができます。そのような意味において、彼女が発達障害であるという原因が分かったことは、個人的にはすごくよかったと思っています。

彼女もなりたくて発達障害になったわけではない

実際に発達障害と向き合い始めたころ、私は、自分より彼女のほうが劣っているという見方をしてしまったことがありました。仕事や結婚生活に対する自信がなくなり、身内の不幸も重なって、私が極度のストレスを抱えていたことに対し、相手を見下すことで自分を落ち着かせ、ストレスを発散しようとしていたのです。またその時、ストレスから逃げるためゲームに依存してしまい、大金を浪費するという失態もおかしてしまいました。

これらのことを反省して改善しようと自分自身を振り返った時に、私にも悪いところはたくさんあり、何から何までスタンダードな人間ではないということに気が付きました。彼女にしてもなりたくて発達障害になったわけではありません。私と彼女はお互い様だと思うようになり、発達障害に対する考え方や向き合い方も変わっていきました。

発達障害と共に歩む

大切なのは二人のバランスを保つこと

お互い様だと思うようになってからは、衝突した時はその都度きちんと話し合いをして、特性の部分は特性として受け入れ、最終的にどうしていくのかといった具体的な方法を二人で決めて、一歩先へと進めるようになりました。大切なのは、特性ばかりに目を向けるのではなく、二人のバランスを保っていくことなのかもしれません。

例えば、彼女には、目の前に人がいるとしゃべりかけたくなる、「多弁」という特性があります。私は、自分だけの時間を持ちあれこれと考えごとをしたいタイプなのですが、考えている時に彼女からずっと話しかけられることで、ゆっくりと考えられなくなり、ストレスを抱えたことがありました。彼女の特性は、本人の意思では止めることができないため、二人で話し合い、会って話をする時間を限定することにしました。

お互い別々の部屋で仕事ができる環境を整え、会って話をするのは食事の時ぐらいにしたのです。仕事の最中にやりとりが必要な場合は、基本的にSNSで行い、なるべく顔を合わせないよう努力しました。そうすることで、以前より衝突する回数が大幅に減少。問題がほとんど発生しなくなり、お互いバランスを保った生活を送ることができるようになりました。彼女はもう少し会って話をしたいと思っているようですので、その点については話し合いをして、今後どうするか決めていきたいと考えています。

結婚生活を6年送り、発達障害に対する悩みがなくなる

現在では、結婚生活を6年ぐらい送っていますので、発達障害と向き合うのが当たり前の生活になっています。発達障害に関係する漫画を描いているため意識はしていますが、発達障害に対する自分自身の悩みや課題などは全くありません。

彼女は相変わらず社交的で、発達障害の友人も多く、その輪に私も参加させてもらうことがあります。皆さん確かに風変わりなところはありますが、発想や考え方がユニークで面白く、楽しい友人としてお付き合いさせていただいています。

そもそも私自身、彼女の行動力や発想の違いなど、発達障害の特性由来のところに魅力や面白さを感じて結婚したのも事実です。特性を個性として捉えようとまでは言いませんし、彼女はそれらの特性によって、たくさん失敗し、辛い思いをしてきましたが、私にとってはいい点が多いことに変わりありません。

もちろんマイナスに感じるところもありますが、一緒に暮らしていければいいわけですので、関係がうまくいっていれば、これは個性でこっちは特性などと、あえてはっきりさせる必要はないと思っています。

重要なのは将来に向けてどう対処していくか

誤解を恐れずに言えば、発達障害の当事者に対する本当の理解は、なかなかできるものではないと考えています。もちろん理解して、合理的配慮を行うことができればベストです。ただ、そもそも人間同士の関係には相性の問題もあり、どうしても好きになれないことなどたくさんあるのも事実です。

あまり肩ひじ張らずに、問題は発生するものだと考え、それに対処し、前へと進む具体策をひねり出していくことが大切だと思っています。そこを重点的に話し合えば、不都合なく、一緒に暮らしていくことができるのではないでしょうか。もちろんその前提として、発達障害の特性に対する認識は必要です。

夫婦の間でも、本当に理解していくことは難しいことですので、仕事関係の間柄では、なおさら困難だと思います。もちろん、気持ちにまで寄り添い接することができればベストですが、発達障害の特性を認識したうえで、ある意味割り切って、仕事をうまく回していくために、問題をどう解決していくのかということに重点を置き対処していくことも、1つの方法ではないでしょうか。

発達障害の特性を知る方が増えていくことを望みつつ、これからも私たち夫婦は、衝突が起きたらその解決に向け話し合い、前へと進む具体策を見出しながら、お互いがその人らしく生きていくことができる関係を、築いていきたいと考えています。

ナナトエリさん(亀山 聡さんの妻)
特別インタビューはこちら

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