大人の発達障害を知るはじめの一歩ガイド
              近年、発達障害についての情報が数多く発信されるようになってきています。ここでは自分にあった“はじめの一歩”を探すあなたの参考になりそうな情報をまとめました。

もしかしたら発達障害かもしれない。
そんな時はどうすればいい?
              相談することで、専門家の知見を活かしてあなたにいま必要なサポートや困りごとを解決することができるかもしれません。
発達障害の特性をもっていても、早めに自身の特性に気づき、受け入れ、日常生活でちょっとした工夫をすることで、またその特性を周囲に伝えてサポートを得ることで、気持ちが楽になり、自分らしく社会生活を送れるきっかけになるかもしれません。

発達障害についてもう少し詳しく知りたい
生まれつき持っている脳の性質や働き方、その後の発達の仕方に偏りがあることで起こる言語や行動、情緒などの特性を「発達障害」といいます。
発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、限局性学習症(SLD)の大きく3つのタイプがあります。
発達障害の種類や特性の現れ方・程度には、個人差があるのが特徴です。ひとつの種類・特性だけが現れる人もいれば、いくつかの種類・特性が重なって現れる人もいます。また、発達障害の特性があっても日常生活や仕事などで支障がない場合もあれば、さまざまな困難を抱えて生きづらさを感じる場合もあります。
誰に相談したら良いの?
発達障害の症状についての相談
医療機関の「精神科」か「心療内科」
大人の発達障害の検査や診断は、「精神科」又は「心療内科」で行っています。発達障害の診断方法は、ADHD、ASD、SLDそれぞれで異なります。お近くの医療機関を調べる際には、専門医のいる医療機関を受診されることをおすすめします。
本サイトがご案内する病院・クリニック検索ページでは、発達障害のタイプ別に、専門的な診療を受けられる施設を掲載しています。
発達障害についての相談窓口や支援
全国の発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害のある人やその家族への支援を総合的に行う専門的機関です。相談する時点で発達障害の診断を受けている必要はありません。
発達障害者支援センターでは、日常生活のさまざまなことを相談することができ、必要に応じて保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関とも連携し、当事者とその家族が豊かな地域生活を送れるよう、幅広い相談に応じています。
※当事者の方向けコンテンツです
  専門医からの
ワンポイントメッセージ
                      生きづらさからくる悩みや困りごとを、ひとりで抱え込んでいませんか?
医師、カウンセラー、支援機関など、あなたと同じような悩みを持つ方からの相談経験が豊富な専門家に相談することで、新たな気づきを得られたり、状況を変える糸口がつかめたりするかもしれません。口に出すだけで気持ちが少し楽になる方もいるようです。
もちろん、あなたの同意がない限り、相談した内容が他人に知られることはありません。
安心して相談の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
監修:昭和大学 発達障害医療研究所 
所長(准教授) 太田晴久先生
どう相談したら良いの?
セルフチェックは自身を理解するための便利なツールですが、あくまで“参考情報”や“目安”としてお考えください。
もし「発達障害の特性を持っている可能性が考えられます」という結果が出ても…
- 必ず発達障害と診断されるわけではありません
 - セルフチェックの結果をもとに職場に伝えることは避けましょう
 
正確な診断のためには、医療機関を受診し、専門医に判断してもらうことが大切です。
診断までの流れ
医師が問診で、今現在困っていることや子どものころからこれまでの生活などについて本人や家族からさまざまな情報を聞き取り、発達障害の特性の種類や程度、日常生活や仕事などへの影響について確認します。
問題なく過ごせていることもあるため、自分がどの程度、自分の特性を理解しているか、また周囲がどのようなサポートをしてくれているかといったことも、診断のために欠かせない情報です。
問診の際に、あらかじめ困りごとやこれまでの経過をメモしたもの、
母子手帳や小学校の通知表を持っていくと役立ちます。
事前に用意しておくと
診断に役立つ情報
- 今困っていることに関する具体的なエピソードや、そのとき感じたことのメモ
 - 日常生活の中での違和感や困ったと感じたことのメモ
 - 母子手帳、小学校の通知表など
 - セルフチェックの結果
 
※当事者の方向けコンテンツです
※当事者の方向けコンテンツです
相談することで、何か日常の生活が大きく変わっちゃうこともあるの?
相談や受診をしたことを第三者に知られてしまうのではないかと不安
発達障害に関する相談や受診をしたこと、その相談内容について、ご自身の知らないところで他の人に知られてしまうのではないかと不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
まず第一に、当事者の同意がない限り、相談内容や診断結果が他の人に知られることはありません。それは、たとえ問い合わせがあったとしても、当事者が伝えたくないことについて、相談内容や診断結果を知る医療関係者等が第三者に勝手に情報を開示することは基本的にありません。
相談した結果を誰かに伝えるのかどうか、自分が何を変えていきたいのか、何を変えたくないのかはご自身でじっくり考えた上で決めることができます。
また、相談をすることは、あなたが受けられるサポートの幅を広げることにも繋がります。
相談先ごとで受けられるサポートや検討可能なオプション
発達障害者支援センター
日常生活やコミュニケーションにおける悩みごとや困りごと、気になることなどへの対処方法や各制度の利用方法などについて相談できます。
また、就労を希望する場合は、就労に関する相談や他の機関と連携した支援についても相談することができます。
※当事者の方向けコンテンツです
医療機関
医療機関を受診し相談することは、必ずしも診断を受けることとは限りません。診断を受けずとも、あなたの特性や困りごとについて、専門医の視点から、どのような解決方法があるのか、相談することができます。
もし診断を受けた場合、そのことを職場や周囲の人にオープンにするかどうかは自分で決められます。また、障害者手帳を取得するかどうかについても自分で決めることがでます。
障害者手帳は提示する義務があるわけではないため、取得しておいて状況にあわせて提示しない(使わない)、必要がなくなったら返還する、といった選択をすることも可能です。
※当事者の方向けコンテンツです
  専門医からの
ワンポイントメッセージ
                      診断は将来の選択肢を増やすための方法のひとつ、気軽に受診しても大丈夫
発達障害の診断は、レッテル貼りをするためのものではありません。たとえ診断されても、それは一生つきまとうような絶対的なものではなく、そこでどうするのかは本人やご家族で考えていくことができます。また、診断を受けることが出発点となり、困りごとへの改善策を見つけ、将来の選択肢を増やすことにもつながると思います。
そもそも発達障害という診断名は、自分自身の特性を深く理解したり、幸せになるために必要なサポートを得るための手段として存在しています。仕事や生活の中で生きづらさを感じていて「もしかしたら発達障害かもしれない」と心配になった時には、ひとりで悩むことなく、まずは医療機関を受診してみることをお勧めします。
監修:昭和大学 発達障害医療研究所 
所長(准教授) 太田晴久先生
急いで相談する必要があるのか分からない
発達障害の特性を持っていても、アプリや手帳などのツールを活用することで忘れ物を防いだり、スケジュールを管理したり、ご自身の特性を理解した上で苦手なことを補完する工夫をすることで、自分らしく働くことも可能です。
そうした工夫をすることで日常生活における困りごとを解決できている場合は、必ずしも急いで相談する必要はないかもしれません。
早めに受診した方がいいのはどんなとき?
もし、ご自身の工夫や努力ではうまく解決できず、日々の暮らしの中で生きづらさを強く感じているのであれば、早めに受診した方が困りごと解決への糸口を見つけられるかもしれません。
例えば、日常生活の中で忘れ物が多いことに困っていても、幼少期から「それくらいできて当たり前、ちゃんとやりなさい」と周囲の人から言われ続けることで、「自分の努力で解決できなければいけないこと」と気負ってしまう場合があります。その結果、周囲の人に助けを求められなかったり、ぎりぎりまで問題を抱え込みがちになってしまう傾向があります。
受診をすることで自己理解が深まり、「これは自分の特性のひとつであって、助けを求めていいことなんだ」と考えられるようになることで、これまで抱えていた困りごととの向き合い方が、少し楽になるもしれません。
受診することで、生きづらさの原因が自分の努力不足ではなく、特性からくるものであることを知ったり、適切なサポートを受けられるようになるため、一人で悩まずに相談することは、あなたの助けになるはずです。
診断を受けるかどうかを自分で判断することが難しい場合は、家族や友人、主治医による客観的な視点もふまえてご自身の状況を正しく理解し、判断するとよいでしょう。
一人で悩み続けてしまうと二次障害を発症することも
大人になってから発達障害と診断される方は、幼少期に失敗して恥ずかしい思いをしたことや叱責されたことなど、過去の苦い経験が積み重なっていることがあります。
その影響で、自分に対する評価が著しく低かったり、うつ症状や強い不安感、過去の体験を突然思い出して過呼吸になったりするフラッシュバックが起こることなどがあり、これを「二次障害」と呼びます。
特にフラッシュバックで苦しむ方は多く、ADHD(注意欠如多動症)の場合、アルコールなどに依存しやすい傾向もみられるため、大人の発達障害は、 発達障害だけではなく、二次障害への対処が必要なケースもみられます。
もし二次障害を発症してしまった場合は、
医師の診療を受け、焦らずに治療することが大切です。
さらなる二次障害の出現を
防ぐために大切なこと
- 日頃から一人で悩まない
 - 適度に休むようにする
 - 生活リズムを整える
 - 自分の特性を知って適切な対応策を知る など
 
専門医から受診・診断についてアドバイス
受診の背景にあるのは、日々の生活の中にある困りごと
太田 晴久 先生 (昭和大学 発達障害医療研究所 所長(准教授))

大人の発達障害と診断される方の中には、二次障害を発症して受診する方もいますが、ネットなどで大人の発達障害に関する情報を入手し、「自分に当てはまっているのではないか」と思って受診する方もいます。どちらの場合も、発達障害の特性があって日々の生活の中で困りごとが多くあることに変わりはありません。だからこそ、 様々な不安や葛藤を抱えながらも、勇気を出して受診を決意されていると感じます。診察にあたって私は、 受診に至るまでのそうした切実な思いを大切に受けとめたいと考えています。
発達障害の診断はごくありふれた特性のひとつがあることを知ること
発達障害と診断されることは、誰にでも大なり小なり当てはまることがある、ごくありふれた特性のひとつをご自身が持っていることを知るものだと捉えてほしいです。
近年、誰もが脳の特性を少なからず持っていて、すべての人が多様性というグラデーションで地続きになっているというニューロダイバーシティの考え方も広まってきました。
発達障害という診断を受けて、自分には生きている価値がないのではなどとひどく落ち込む方もおられますが、落ち込む必要はありません。診断を受けることは、決して人間として劣っていることを示しているのではなく、ご自身の得手・不得手を知っていただき、困りごとへの適応力を高めるための第一歩だと捉えてみてください。
発達障害には対処法がある
発達障害は、診断を受けたとしても状況を好転させられないものだとイメージされる方もいらっしゃいますが、発達障害にはさまざまな対処法があります。
発達障害という診断によって、自己理解が深まることだけでも対処できることは増えますし、ソーシャルスキルトレーニングなどで対処法を身につけることでも適応力は高まります。すべての人に必要となるわけではありませんが、お薬による治療が力になる人もいます。
つらい時を乗り越えるために一時的なサポートを得る
診断がつくと、ずっと通院をしないといけないものだと思っておられる方もいらっしゃいますが、ずっと支援が必要な方ばかりではありません。つらい時を乗り越えるために、一時的にサポートを得ることで、自分とのつきあい方が上手になり、サポートの必要のない生活に戻られる方もいます。
仕事や生活の中で生きづらさを感じていて「もしかしたら発達障害かもしれない」と心配になった時には、ひとりで悩むことなく、まずは医療機関を受診してみることをお勧めします。
専門医のインタビュー記事はこちら
※当事者の方向けコンテンツです
監修:昭和大学 発達障害医療研究所 
所長(准教授) 太田晴久先生
本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。