タグから記事をさがす

発達障害 みんなのストーリー

悩みの原因を突き詰めることで、自分の状態を俯瞰ふかん的に可視化・整理する方法を習得。自分の特性への理解を深め、自分に合う対処法を探索しています

当事者インタビュー(LD・ASD)
〜匿名(30代前半・男性)〜

プロフィール:

  • 年齢:30代前半
  • 職業:福祉サービス 非常勤職員(一般雇用枠)
  • 特性に気づいた時期:10代半ば
  • 病院を受診した時期:10代半ば
  • 診断された時期:20代前半
  • 診断名:学習障害、
    自閉スペクトラム症グレーゾーン

主な特性:

  • 睡眠リズム障害:夜、眠れない。朝に起きられない。
    睡眠時間が日々、徐々
    に後ろにずれていき、修正が難しい。
  • 学習障害:本を読むこと、静かに勉強することが苦手。
  • 発達障害:人目が気になる。自分の思いを他人
    に伝えるのが苦手。他人が何を話して
    いるのかわからなくなることがあ
    る。時間配分を行うのが苦手(一つ
    のこ
    とに集中しすぎてしまう)。
    集団で会話していると、話し出すタイミング
    がわからなくなることがある。

本文中に使用されている専門用語(アンダーラインのついたもの)については発達障害関連ワード集に詳しく説明があります。

発達障害に気づく

受診のきっかけは、睡眠リズム障害に対する家族の勧め 外出や対人関係、時間管理につまずくこともあった

最初に病院を受診したのは、10代の半ば頃、睡眠が安定しないためでした。夜に寝つくことができず睡眠時間が後ろ倒しになり、朝に起きるのがつらすぎて学校に行けないこともありました。また、学生時代の半分以上を海外で過ごしており、帰国後に環境が変わったことで、学校の成績が落ちてしまいました。

このころから、日によって抑うつ状態になることがありました。不安感が強く、外出は好きなのに人目が気になり電車に乗ることができない、ということもありました。

10代後半のころには、対人関係やコミュニケーションが苦手だと感じていました。時間配分も苦手で、何かに集中しすぎて時間が経つのを忘れたり、その結果、睡眠のリズムが乱れたりすることもありました。

そのころはまだ、発達障害の目立った特性を自覚しておらず、これらの理由が判明するまで病院を転々としていました。結果として、20代前半で学習障害と自閉スペクトラム症グレーゾーン、30代前半で睡眠リズム障害、と診断されました。

母が探してくれた病院で、発達障害の診断を受けました。私は、自分には発達障害があるという自覚ありませんでしたが、母には心当たりがあったようです。

診断により、初めて「発達障害があること」を知り、自分の特性との一致に気づく

私自身は、発達障害と診断されて初めて、自分の特性と発達障害の特性に重なる部分が多いことに気づきました

例えば、私は勉強や本・書類を読むことが苦手です。文章を読めないわけではありませんが、途中でどの部分を読んでいたかがわからなくなってしまいます。一方で、機械や部品をいじることは得意です。

例えば、私は勉強や本・書類を読むことが苦手です。文章を読めないわけではありませんが、途中でどの部分を読んでいたかがわからなくなってしまいます。一方で、機械や部品をいじることは得意です。

また、コミュニケーション面では、自分の発言が自分の意図とは全く異なる受け取り方をされていることに、友人から指摘されて初めて気づき、驚かされることもありました。

発達障害を受け入れる

「障害」という言葉に引っかかりつつも、
自分の特性との一致から納得

発達障害と診断を受けたときは、「発達障害」という言葉も知らなかったので、ピンときませんでした。また「障害」という言葉に引っかかり、「障害者」という線引きをされるのでは、と抵抗がありました。発達障害の有無は目に見えませんし、今でも、「本当に発達障害があるのか」と、自問自答してしまうことはあります。

ただ、発達障害の特性と自分の特性に一致する部分が多くあったため、「発達障害がある」という事実を納得して受け入れることができました。

診断されたことで、悩みの原因や自分の
特性を理解でき、対処法を学べた

診断により、悩みに対する原因を見つけられたことで、素直に対処法を学ぶことができました。私にとって、この点がとてもよかったと思っています。また、発達障害を知ったことが現在の仕事につながっており、成長するきっかけとなったと感じています。

自身の過去を振り返ると、まず「自分の特性をよく理解すること」が大事だったと考えています。

発達障害とともに歩む

“悩みとその原因を俯瞰ふかん的に把握する方法”を
カウンセリングで習得

私は、発達障害について、周囲の人にはあまり相談していません。その理由は、ただ話を聞いてもらうだけではなく、適切なアドバイスをくれる相手に相談したいためです。現在は、母と病院のカウンセラーに相談しています。

病院では、専門の心理士によるカウンセリングを月に1~2回受けながら、自分の特性と向き合っています。相談時間は1回あたり30~45分間です。専門知識を持ったカウンセラーに話を聞いてもらうことで、今抱えている自分の悩みを自覚し、頭の整理もでき、心の安定につながっています。普段は口数が少ないほうですが、人に話すことで考えがまとまるタイプなので、カウンセリングは自分の生活の一部として欠かせない要素となっています。

私は、このカウンセリングを通して、“自分の状態を俯瞰ふかん的につかむ事の重要さ”に気づきました。発達障害とうまく共存していくためには、自分の悩みとその原因を特定し、対処を行うことが重要だと感じています。私は、これらの方法をカウンセリングから学び、意識的に行えるようになったと思います。具体的には、悩み事を紙に書き出すことで、悩みの根本的な原因を探り、自分なりに整理するようにしています。

また、通院は大好きな車で出かけられる機会だととらえています。コロナの現在では、オンライン受診も活用し、問診や薬の処方を受けることもあります。

自分の状態を把握し、特性に合った環境をつくるため、アプリやウェアラブル機器を活用

発達障害とうまく付き合っていくためには、自分の状態を俯瞰ふかん的に把握すること、そして特性に合わせた対処を行うことが大切です。私は機械や先進的な技術が好きなので、アプリや機器を使って自分の状態をつかみ、自分にとって生きやすい環境を作るようにしています。

例えば、頭の整理をするために、携帯アプリを活用して、自分が抱えているタスクを見られるようにしています。

また、睡眠リズム障害と向き合うために、ウェアラブルデバイスなどを活用して睡眠時間を計測し、毎日紙に記録することで、睡眠状態を可視化・把握できるようにしています。

また、睡眠リズム障害と向き合うために、ウェアラブルデバイスなどを活用して睡眠時間を計測し、毎日紙に記録することで、睡眠状態を可視化・把握できるようにしています。

さらに、私にとって苦手な環境である“混雑した電車に乗ること”を回避するために、通勤を含めて車での移動を取り入れる、という対処法も実践しています。

今後は、“こだわること”と“こだわらないこと”のメリハリをつけられるようになりたいと考えています。また、時間を忘れて何かに没頭しすぎることがないよう、普段から時計を身につけるようにしています。

自分の特性に合う対処法を探るため、
情報収集しつつ試行錯誤を

20代の半ば頃、もう少し自分に責任感を持ちたいと考えるようになり、インターネットで自分の特性への対処法について調べ始めました。現在でも、自分の特性に合った対処法を探しつづけています

例えば、睡眠リズム障害のために睡眠時間がずれたときには早めに就寝するようにしたり、薬を飲む時間を変えたりと、試行錯誤を重ねています。

また、ASDと診断されたことで、コミュニケーションについて以前よりも気をつけるようになりました。「話し方によっては相手に誤解を生じさせてしまうこともある」、「相手の捉え方は自分の意図と異なることがある」という点を頭の中で整理して、一言ずつ気を配って話すようにしています。

ピアサポーターという仕事柄、発達障害当事者の特性をそれぞれ理解し、個々の悩みに対して自分なりの工夫をアドバイスすることもあります。しかし、発達障害の特性は十人十色なので、一人ひとりに合わせた対処法を用意する必要性を感じています

障害に理解のある柔軟な職場で、
リーダーを務めている

私は母に勧められたこともあり、診断を受けたときに障害者手帳を取得しました。

現在の職場では施設管理のリーダーを務めています。一般雇用枠ですが、発達障害があることは職場に伝えてあります。障害に理解のある職場なので、同じ境遇の仲間もいます。
柔軟な働き方ができる職場であり、就職当初は週1回から勤務を開始し、現在では週4日働いています。

生きづらさを抱えている方へのメッセージ:悩みの原因に発達障害が関係していたら受け入れることが大切。これからも障害にとらわれず挑戦しつづけたい

まずは、自分が何に悩んでいるのか整理すること。次に、その原因は何かを把握すること。そして原因が発達障害にあるなら、それを受け入れることが大切です。私自身、発達障害の診断を受け、自分が抱える悩みの原因を把握できるようになりました。今では日々の悩みを整理し、対処しながら生活できるようになり、本当によかったと思っています。

これからも発達障害とうまく共存していきたいと思っています。発達障害があるからといって、挑戦をあきらめたくありません。発達障害ということにとらわれず、自分の特性をよく理解したうえで、何事にも挑戦していきたいです

この記事を読んだ方は
こちらの記事も見ています